目次
はじめに
日常生活には、考えることなく自然と行われる活動がたくさんあります。
その一つが、息をすることです。
しかし、これが困難になる病気があることをご存知でしょうか?
今回は、息をすることが難しくなる病気、COPD(慢性閉塞性肺疾患)についてお話します。
COPDは、時間が経つと肺が硬くなり、空気の出入りが困難になる病気です。
この状態が持続すると、呼吸をするだけで全身のエネルギーが奪われてしまいます。
これを聞いて不安に感じた方もいるかもしれません。
しかし、安心してください。
ここでは、COPDにならないための方法や、なってしまった場合の対応方法などお伝えしていきます。
このブログを通じて、COPDについて深く理解し、自身の健康についてより認識を深めていただければ幸いです。
COPDとは
Chronic:慢性
Obstructive:閉塞性
Pulmonary:肺
Disease:疾患
COPDは「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入することで生じる肺の疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す」と定義されています。
受動喫煙などの影響によって非喫煙者に発症することもあります。
WHOによる2030年 死亡順位の予測
- 虚血性心疾患
- 脳血管障害
- COPD
- 下部呼吸器感染症
- 交通事故
- 呼吸器がん
- 糖尿病
- 高血圧性心疾患
- 胃がん
- HIV/AIDS
病態
気管支(気道)と肺の炎症によって障害が生じます。
早期発見
疑われる特徴
以下の項目に注意を払うと、COPDの疑いを早期発見できます。
- 喫煙歴あり(特に40歳以上)
- 痰、痰が絡む咳、喘鳴
- 階段や坂道の登りなどでの息切れ
- 風症状を繰り返す、または回復に時間がかかる
- 下記疾患を合併する患者
心血管系疾患、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症など
疑われる場合の初期対応
COPDが疑われる場合は以下のように対応しましょう。
- すぐに禁煙する
- 早急に呼吸器内科を受診する
COPDスクリーニングのための質問票(COPD-Q)
①現在、おいくつですか? ▢44~49歳:0点 ▢50~59歳:1点 ▢60~69歳:2点 ▢70歳以上:3点 ②かぜをひいてないのに、たんがからんでせきをすることがありますか? ▢ほとんどない:0点 ▢まれに:0点 ▢:ときどき:1点 ▢ほとんどいつも:1点 ▢いつも:1点 ③走ったり、重い荷物を運んだりしたとき、同年代の人と比べて息切れしやすい方ですか? ▢いいえ:0点 ▢はい:1点 ④この一年間で、走ったり、重い荷物を運んだりしたとき、ゼイゼイやヒューヒューを感じることがありましたか? ▢ほとんどない:0点 ▢まれに:0点 ▢ときどき:0点 ▢ほとんどいつも:1点 ▢いつも:2点 ⑤これまで、たばこをどれくらい吸いましたか?( )に数字を記入し、次の計算をしてください。 1日の平均喫煙本数( ) × 喫煙年数( ) = 合計( ) ▢吸わない:0点 ▢1~399:1点 ▢400~999:2点 ▢1,000以上:3点 |
●各質問の点数を足して合計点を計算してください。
①の点数( ) + ②の点数( ) + ③の点数( ) + ④の点数( ) + ⑤の点数( ) = 総合点( )
総合点が4点以上でCOPDにかかっている可能性がありますので、医療機関を受診し、呼吸機能検査を受けることをお勧めします。
症状
症状
- 「以前より動いたときに苦しいなぁ」と感じることがあります
- 多くの場合、歳のせいだと勘違いして発見を遅らせます
- 病態が進むと、息が吐きづらくなって呼吸困難が強くなります
- 食欲不振などから体重減少も起こります
- 長く続く咳や痰が認められることもあります
COPDの増悪とは
息切れや咳、痰の増加、胸部不快感や違和感の出現あるいは増強などを認め、今までの状態から悪化し治療変更が必要となる状態の事を言います。
- COPDは呼吸器感染症や大気汚染などによって増悪することがあります(約30%は原因不明)
- 増悪は呼吸機能や生活の質を低下させ、生命予後も悪化させます
COPDの怖さ
日本におけるCOPD死亡者数の推移
COPDによる死亡者数は年々増加傾向であり、2017年での死亡者数は18,523人でした。
これは交通事故による年間死亡者数の約6倍です。
世界における死亡原因 2016
予防
発症前の予防
COPDは罹患すると経年的に呼吸機能の低下が進行していくため、発症を予防することが重要です。
- タバコを吸わない
- 受動喫煙を受けない
- 有害物質を吸う環境を避ける
発症後の予防
- 禁煙の継続
- 手洗いやうがいなど、感染予防対策の徹底
- 呼吸器感染症のワクチン接種
- 薬物療法の継続
- 呼吸リハビリテーション(身体機能や身体活動の維持)
進行の予防
COPDの進行を予防するためには、運動だけでなく食事や薬も重要です。
1つでも欠けると効果が減少してしまいます。
運動
筋力トレーニングやウォーキングなどの有酸素運動は、呼吸困難感を軽減し、運動耐容能を向上させます。
理学療法士に相談しながら無理のない範囲で運動学習をつけることが大切です。
栄養
体重が減らないようにきちんと食事をとりましょう。
筋肉が少ない方は、蛋白質が多いもので、特に分岐鎖アミノ酸(BCAA)を多く含む食品の摂取が推奨されます。
薬
気管支拡張薬が中心となります。
気管支を拡げるため呼吸困難が軽減し、動作が楽に行えます。
医師や薬剤師の指示通り適切に使用しましょう。
自宅で運動習慣を身につけることで、日常生活を送るために必要な基本動作を楽にできるようにしましょう
風邪などの感染症にかかりにくい丈夫な身体をつくりましょう
自宅で出来る運動療法
●不明な点は理学療法士にご相談ください。
<運動を行う際の注意>
✔食前後30分は運動を控えましょう
✔無理せず体調の悪い時は休みましょう
✔運動は”ややきつい”と感じる程度にしましょう
✔息切れが強くなったら休憩し、呼吸を整えましょう
✔運動するときは口すぼめ呼吸や可能なら腹式呼吸をしましょう
✔動くときは息を止めず、息を吐きながら動きましょう
口すぼめ呼吸
運動前の準備体操
首や肩、身体全体の緊張を落とすためにリラックスしましょう!
柔軟性トレーニング
身体の柔軟性を維持・改善する運動も行いましょう。
それぞれのストレッチは1回20秒で5回を目安に行いましょう。
体幹・背部のストレッチ
体幹のストレッチ①
体幹のストレッチ②
下肢の筋力トレーニング
- 10回を1セットとし2~3セットを目指しましょう
- 体調に合わせて1日2回行いましょう
- 運動は週3回程度を目指しましょう
- 必ず息を吐きながら力を入れましょう
- 痛みや疲労感を感じた場合はすぐに中止してください
ふともも上げ運動・ひざのばし運動
スクワット・かかとあげ運動
有酸素運動
- 準備体操を行った後、体調が良ければウォーキングを行いましょう
- 目標は20分程度ですが、最初から無理をしないようにしてください
- 歩くペースにも気を付けましょう
- ”ややきつい”と感じる程度で十分です
- 週3回程度と、できるだけ習慣化すると良いです
まとめ
COPDについてお分かりいただけましたでしょうか。
ここでは以下の点について解説してきました。
- COPDとは
- 早期発見
- 症状
- 予防
- 自宅で出来る運動療法
COPDについて、知っていた方も知らなかった方も、こわい病気だということが改めて理解できたのではないでしょうか。
まずはCOPDにならないために、「タバコを吸わない」「タバコを吸っている人に近づかない」これが大事だと思います。
パートナーが喫煙者の場合にはよく話し合ってみて下さい。
そして、自分やパートナーに心当たりのある症状がみられたら、すぐに呼吸器内科に受診してみて下さい。
進行を予防することもできます。
COPDを知った今日が一番若い日です。
自分らしい人生を送り続けるために、できることはなるべくやっておきましょう。
それでは、また。
【参考・引用文献】
理学療法ハンドブック シリーズ⑨ 慢性閉塞兵肺疾患(COPD)~COPDを予防して活発な毎日を~
実習!呼吸理学療法