肩の痛みでお悩みはありませんか?
肩関節周囲炎は、肩の痛みや動く範囲が狭くなり、生活の中で困ることが多くなる疾患です。
この疾患は、症状に合わせて対応すれば改善がみられます。
このブログでは適切な知識と効果的な運動を分かりやすく説明しています。
ぜひ、みなさまの健康的な生活にお役立てください。
目次
肩関節周囲炎とは?
肩関節周囲炎は一般的に四十肩、五十肩とも呼ばれています。
40~70歳の年齢層に発症し、人口の2~5%の方にかかり特に40~60歳の女性に多くなっています。
関節を構成する骨、軟骨、腱(筋肉の一部)などが老化して肩関節周囲の組織に炎症を起こすことが主な原因と考えられています。
肩関節の動きをよくする袋(滑液包)や関節を包む袋(関節包)が硬くなるとさらに動きが悪くなります。
どのような症状が起こるか?
肩関節周囲炎の症状は個人差がありますが、一般的な症状は以下の通りです:
- 肩の痛み:痛みは通常、肩の前面や側面に感じられ、腕に放散することがあります。
- 肩の動きの制限:肩の炎症が進行すると、肩の動きが制限され、日常生活での動作が困難になることがあります。
- 肩の力の低下:痛みや炎症のため、肩の筋力が低下することがあります。
- こわばり:長期間放置すると、肩の周囲の筋肉や腱が硬くなることがあります。
- 夜間痛:寝ている間に肩の痛みが悪化し、睡眠を妨げることがあります。
どのような回復経過をたどるか?
典型的な肩関節周囲炎は次の3つの病期を経て、1~3年くらいの経過で回復します。
炎症期
初めの症状として痛みが出現し、肩を動かすことが苦痛になります。
安静時の痛みや夜間痛を生じるようになり、拘縮(関節が動きにくくなった状態)が徐々に進行します。
拘縮期
拘縮が中心となり、あらゆる方向に動きが狭くなりますが、痛みは軽快していきます。
寛解期
拘縮が徐々にとれて、動きが改善していきます。
肩の健康自己チェック
はい いいえ | |
1 | 夜間痛がある ▢ ▢ |
2 | 朝起きた時に痛みがある ▢ ▢ |
3 | 反対側の肩が触れない ▢ ▢ |
4 | 脇をしめて外に開かない ▢ ▢ |
5 | 背中が触れない ▢ ▢ |
6 | おへそが触れない ▢ ▢ |
7 | 着替えがツライ ▢ ▢ |
8 | 髪を洗うのがツライ ▢ ▢ |
9 | 肩より上の作業がツライ ▢ ▢ |
1か2が「はい」、3~9の「はい」が3つ以下 炎症期
1か2が「はい」、3~9の「はい」が4つ以上 拘縮期
1と2が「いいえ」、3~9の「はい」が1つ以上 寛解期
医学的治療
基本的に保存療法が中心になりますが、内容は病期によって違いがありますので注意しましょう。
炎症期
- 強い痛みがある
- 夜間痛で眠れない
- 肩の動きは比較的良い
治療方針は安静です。
炎症を落ち着かせることが大事です。
拘縮期
- 痛みが落ち着いてくる
- 肩が動かしにくくなる
治療方針は温めるです。
血行を良くして筋肉をほぐしながらゆっくり動かします。
寛解期
- 痛みがほとんどない
- 肩の動きが徐々に良くなる
治療方針は動かすです。
痛みに注意して積極的に動かしましょう。
理学療法
理学療法には運動療法、徒手療法、物理療法があります。
運動療法
運動療法の目的は肩関節を含めて、さまざまな関節や身体全体に対して適切な運動を習得することです。
肩関節・肩甲骨周りも含めて筋肉の活動を高めます。
姿勢改善を図り、肩への負担軽減につなげます。
徒手療法
徒手療法は、理学療法士の手によって直接行われ、関節の動きや筋肉の柔軟性など機能の改善を図ります。
痛みのある時期は愛護的に実施していきます。
物理療法
機器を用いて、痛みを和らげたり、緊張している筋肉をほぐします。
肩と姿勢は仲良しです
姿勢と肩の動きはお互いに影響し合っているため、悪い姿勢によって肩に負担をかけている可能性があります。
肩に痛みがある方でも実際には姿勢の悪さから肩甲骨や肩まわりの筋肉がしっかり動かないことが影響して、痛みにつながっていることがあります。
肩甲骨の動きが悪くなることで肩の動きが悪くなります。
背中が丸くなると、胸部や肩甲骨周囲の筋肉が硬くなり、肩甲骨が動きにくくなります。
胸部や肩甲骨周囲の筋肉が柔らかくなると、胸がはれるようになり、肩の動きも良くなります。
肩を動かすときの注意点
Q&A
Q.肩の痛みが強くて動かすのも辛いのですが、どうしたら良いですか?
A.炎症期では、痛みで眠れなかったり、じっとしていても動かしても痛みが出現します。まず、痛みが出にくい腕の位置を探して、リラックスできる環境を整えましょう。それによって痛みが和らぎ、動かしやすくなったりします。
痛みが強い時は、自分でも動かした方がよいですか?
痛みを我慢して動かす必要はありませんが、痛みのない程度に運動したり、生活の中で使うことは構いません。しかし、無理をすると悪化することがありますので、医療機関で理学療法士による痛みを和らげるリハビリを受けたり、適切な運動を教えてもらいましょう。
肩の動きが悪くなった場合、どのようなリハビリを受けたり、運動を行うとよいですか?
炎症が治まり痛みが軽減してくると、筋肉が硬くなり、肩の動く範囲が狭くなります。理学療法士による硬さをほぐす運動療法や適切なセルフエクササイズを指導してもらうことをお勧めします。
炎症期と拘縮期では痛みが違います
炎症期
- 痛みで動かせない
- 筋肉等への血流、酸素不足
- 筋肉等の柔軟性低下
- 痛みが強くなり、動かしずらい
拘縮期
- 運動して動かす
- 筋肉等への血流、酸素改善
- 筋肉等の柔軟性改善
- 痛みが減り、動かしやすくなる
痛みはその動きは危険という身体からのサインでもあります。痛いと感じる動作は徹底的に避けるようにしましょう。
セルフエクササイズ
病状に合わせて行うことが重要です。次のステップを踏んで行ってみましょう。
Step 1
痛みが強いときは、楽な姿勢で安静にすることが大事です。
寝ているときや座っているときの環境を整えましょう。
Step 2
痛みが少し落ち着いたら痛みのない範囲で少しずつ動かしていきましょう。
それぞれ10~15回を目安に、1日2~3セット行いましょう。
膝上運動
前後運動
左右運動
Step 3
痛みがなくなったら積極的に動かしましょう。
<運動を行う際の注意>
- 痛みや辛さを感じない程度の強さで行いましょう。
- 力が入りすぎないように注意して、無理のない程度でゆっくり行いましょう。
それぞれ10~15回を目安に、1日2~3セット行いましょう。
Y-W運動
前後運動
左右運動
ねじり運動
セルフエクササイズを行って効果がない時や痛みが増す場合は速やかに中止し、医師、理学療法士などにご相談ください。
生活の工夫
生活環境を少し工夫するだけで症状が和らいで使いやすくなります。
手の使い方を工夫して、肩の負担を減らしましょう。
袖を通すときは
荷物を持つのは避けましょう
車を運転するときは
座っているときは
肩関節周囲炎になりやすい人
- 糖尿病
- 甲状腺疾患がある方
- 血中脂質値(中性脂肪、コレステロール)が高い方
- デスクワークなど活動量が少なく、長時間同じ姿勢の方
放置すると症状が改善しませんので、必ず治療を行いましょう。
定期的な運動やリラックスできる習慣をつけましょう
まとめ
肩関節周囲炎についてお分かりいただけましたか。
ここでは以下の点について解説してきました。
- 肩関節周囲炎とは
- 肩の健康自己チェック
- 医学的治療
- 肩を動かすときの注意点
- セルフエクササイズ
- 生活の工夫
まずはこのような疾患があるということを理解することが大事だと思います。
もし自分がこのような症状で困っているのであれば、自分でできることを試してみて下さい。
症状が軽快すれば幸いです。
セルフエクササイズを行って効果がない場合は速やかに中止し、医療機関への受診をお勧めします。
【参考・引用文献】
理学療法ハンドブック シリーズ⑬ 肩関節周囲炎
特集:高齢者の骨・関節疾患の病態